2022-01-01から1年間の記事一覧

ロイ・ハーグローヴのバラードプレイに酔う

jimmy cobb quartet Jazz In The Key Of Blue ヨタム・シルバースタインのリーダー作に客演し、素晴らしい演奏を聴かせたロイ・ハーグローヴ。その数年前にはジミー・コブのリーダー作でも忘れられない名演を残している。それがこの作品。前作『Cobb's Corne…

優しく包み込む音楽

yotam silberstein Brasil イスラエル出身のギタリスト、ヨタム・シルバースタインによる優しいブラジリアン・ジャズ。前作『Resonance』にも参加していたロイ・ハーグローヴが4曲で素晴らしいソロを聴かせる。 ギターの音色がほんとうに美しい。弦楽器は管…

ニューオーリンズ・ブルース

Wilbur De Paris Jimmy Witherspoon New Orleans Blues トラディショナルな音楽は気分転換にいい。ウィルバー・ド・パリスという人は寡聞にして知らないが、ニューオーリンズジャズ復興の立役者らしい。 このトロンボーン奏者が率いるバンドサウンドに乗って…

雲海

プレッシャーとストレスから解放された3連休。渋滞を避けて東京を脱出し、伊那谷へ向かった。 夜明け前の中央道は霧に覆われ、視界不良ながら幻想的だ。笹子トンネルを抜けて甲府盆地が見えてくるころには明るくなりはじめ、雲海のなかにいるような光景が広…

ジャッキー・マクリーンの系譜

ian hendrickson-smith the lowdown いまどき風のジャケットから飛び出す音はどこか懐かしい。骨太のアルトは貴重なジャッキー・マクリーン系か。 前半はオリジナル、後半はスタンダードで構成。オリジナルのほうが魅力的に響く。バラードに課題がありそうだ…

国葬をめぐって

多くの国民の反対を押し切って安倍晋三の国葬が強行された。岸田内閣は取り返しのつかない大失態をやらかしてしまった。 作家の保阪正康がBSの報道番組で国葬を実施したこと、および岸田文雄を厳しく批判していた。安倍晋三を国葬としたことを決して認めては…

シャインマスカット

連休は収穫と出荷の繰り返し。4年目になって、だいぶ粒が大きくなった。シャインマスカットは見た目がすべて。粒が大きくなればなるほど高く売れる。来年はもっと立派になるはず。 新しい苗木が戦列に加われば、いくぶん収入も増えるだろう。農業で生計を立…

魂のピアノ

台風直撃で巣篭もりの3連休となった。昨年の今頃は母が入院したため、1週間盛岡にいたことを思い出す。あれから1年が経ち、身の回りの環境が大きく変わった。実家がなくなると、墓参りぐらいしか盛岡に行くこともなくなる。生まれてからずっと暮らしていたわ…

パット・マルティーノの休日

pat martino we'll be together again 正確無比なピッキングで速射砲のように音を紡ぐパット・マルティーノ。プレイスタイルのみならず見た目も冷酷なスナイパーのよう。このギル・ゴールドスタインとのデュオは、スピードを殺した内省的なプレイの異色作。…

藤原新也の50年

初出版『インド放浪』から50年、藤原新也のこれまでの仕事を集大成した新著が刊行された。 文章は書き下ろしだが、撮影時の記憶や印象が鮮明に刻まれ、写真の訴求力を増幅させている。撮影から年月が経っていることで、メッセージはより普遍的で本質に迫って…

渡欧で開運したデューク・ジョーダン

duke jordan duke's delight リチャード・ウィリアムスつながりでこのアルバムを取り上げておこうと思う。フロントにリチャード・ウィリアムス、チャーリー・ラウズを迎えてのデューク・ジョーダン、1976年のリーダー作。デューク・ジョーダンも地味なピアニ…

槍のふところ

ババ平にテントを張り、槍を見に行ってきた。 11年ぶりの再訪となる氷河公園。自分が歳をとっただけで、なに一つ変わっていない。

リチャード・ウィリアムスに何が足りなかったのか

richard williams new horn in town 輝かしい音色の正統派トランペッター、リチャード・ウィリアムス。これだけの実力を備えながらリーダー作がこれだけというのは不思議でならない。一聴、「リー・モーガンじゃないしなぁ、クリフォード・ブラウン? 」と思…

エモいアルトの名盤

dylan cramer all night long ソニー・クリスが好きいうのはある種の気恥ずかしさをともなう。いったんカミングアウトした以上は開き直るしかない。演歌っぽいと言われようが、下品と言われようが、好きなものは仕方ない。日本人に人気があるソニー・クリス…

フレッド・ハーシュならこれ

fred hersch In Amsterdam Live at the Bimhuis 近作を追いかけているわけではないので決めつけるつもりはないのだけれど、フレッド・ハーシュの最高作の一つであることは間違いないはず。この人はトリオよりもソロがいい。いろいろあるソロ作のなかでこれを…

良いオーディオが欲しくなる

toni solà & ignasi terraza trio night sounds スペイン出身のテナー奏者トニ・ソラのワンホーンアルバム。2000年作。 スコット・ハミルトンよりもモダン、男の色気を感じさせる音色はジャンニ・バッソに近く、バルネ・ウィランよりもオーセンティック、そ…

三十代の仕事

「サラリーマンの賞味期限は15年」という説がある。大卒で入社して15年、三十代後半で賞味期限が切れるというのは寂しい話だが、頷ける面もある。 優れた人は三十代に良い仕事をしている。逆にこの時期までに優れた仕事をしていない人は見込みがないともいえ…

ジャケ買い

lyle murphy gone with the woodwinds 美女ジャケ揃いのコンテンポラリーのなかでも、このジャケットは最高傑作だと思う。 余白を生かしたモノトーンでまとめたグラフィックデザイン、モデルの現代的な美しさ、上品な色気。演奏には一切興味なかったが、思わ…

David T.Walkerの幸福感

David T. Walker BeLoved David T.によるバカラック集。江戸屋という日本のレーベルによる音源で、David T.の魅力を理解した日本人ならではの好企画だと思う。 David T.のギターでバカラックの曲を聴く。嫌なことがふぅーっと消えていく。あぁなんて幸せな時…

社会の木鐸

レイプ犯、山口敬之の逮捕を揉み消した男が警察庁長官に就任したのは昨年9月。菅義偉の片腕として番犬の役割を果たしてきた論功行賞人事だった。 安倍晋三銃殺事件で警備の不手際の責任を取らされるかたちで事実上の更迭となったわけで、岸田文雄と菅義偉が…

「ブルー・パール」が聴きたくて

bud powell the amazing bud powell vol 3 バド・パウエルのディスコグラフィのなかで、このアルバムが地味な位置付けになっているのは、後半のカーティス・フラーを含むカルテットの演奏のせいだろうと思う。 カーティス・フラーをフロントに迎えて録音する…

失われた時代のサウンドトラック

lonnie johnson Blues & Ballads 長い夏休みの最終日、鬱鬱とした気分の日曜には、こんなシンプルでルーズなブルースがいい。 2本のギターとベースという編成で、ゆったりとした歌を聴かせる。オールディーズのようなテイスト、ノスタルジックな人間讃歌。現…

情念と縄文の国、青森

墓参りのついでに足を伸ばして青森へ。八戸から青森、津軽へ反時計回りにクルマを走らせた。 青森には独特の文化を感じる。原初的なエネルギーと情念が剥き出しの塊となってぶつかってくるようだ。それは多分にねぶたのイメージによるものだろうけど、今やね…

ジャック・ディジョネットの珍盤

8月9日はジャック・ディジョネットの誕生日だという。1942年生まれでちょうど80歳。自分のなかではスタンダーズのイメージのまま時間が止まってしまっていて、もうそんな歳なんだなぁと驚いてしまった。ピアノアルバムを出すなど、多才なジャック・ディジョ…

カルト国家、日本

安倍晋三の銃殺でパンドラの箱が開き、自民党の実態が腐臭とともに漏れ出した。選挙のためなら反社会的エセ宗教団体も引き入れようという無節操ぶり。そして、利用するつもりが取り込まれてカルト集団と一体化するというマヌケぶり。海外からみれば、日本は…

ソニー・スティット with ハンプトン・ホーズ

強烈な個性はないけれど、アルトもテナーも超一流。芯のある綺麗な音で澱みなく歌う。ソニー・スティットほど「職人」という言葉がピッタリくるミュージシャンはいない。いつの時代もソニー・スティットは高いクオリティを維持している。1950〜1960年代はも…

バランスのとれたトリオ

リバーサイド時代のビル・エヴァンスは、新たな表現を追究する姿勢が前面に出ていて、それが凛とした香気を生んでいる。とりわけスタジオ録音盤は演奏が引き締まっていて、いっそう強くそれを感じる。ベースがスコット・ラファロからチャック・イスラエルに…

野沢温泉の優しさ

土地探しが一段落したこともあって、かみさんが誕生祝いに野沢温泉に招待してくれた。宿は「村のホテル 住吉屋」。野沢温泉は何度か訪れていて、麻釜のそばにあるこの宿には、かねてから泊まってみたいと思っていた。ステンドグラスをあしらった大正浪漫風の…

いまさらブルーベック

いかにも白人的なデイヴ・ブルーベック・カルテットは長年好みではなかった。ところがジョー・モレロのドラムに耳を傾けるようになり、このグループの演奏を楽しめるようになった。変拍子も難なくこなすジョー・モレロのドラミングは、キレが良く現代的で、…

丸くなる人

niels-henning ørsted pedersen this is all i ask 歳をとって丸くなるのは良いことに違いない。 若い頃とんがっていたり不良だったりした人ほど、歳を取ってカッコ良くなっていたりする。角がとれて人間に幅がでるということは優しくなるということでもある…