野沢温泉の優しさ

土地探しが一段落したこともあって、かみさんが誕生祝いに野沢温泉に招待してくれた。宿は「村のホテル 住吉屋」。野沢温泉は何度か訪れていて、麻釜のそばにあるこの宿には、かねてから泊まってみたいと思っていた。

ステンドグラスをあしらった大正浪漫風のレトロなお風呂、数少ない自家源泉、季節感のある美味しい料理、野沢温泉のシンボル麻釜のすぐそばという立地、セールスポイントは数々あるけれど、この宿にはそれだけでなく言葉で説明できない魅力がある。

ほどよい距離感の接客、そこかしらに感じる歴史と飾らない文化、三階まで上ることも苦にならないよう計算された階段。とりわけニ階の踊り場にあるスペースが良い。大きく開いた窓の下に腰掛け板があり、湯上がりに涼むよう設計されている。宿全体にさりげない優しさが配られている。

温泉を中心とした共同体の日常とそこに流れる時間は優しい。野沢温泉らしさに溢れた宿だった。野沢温泉に高級リゾート宿は似合わない。