バランスのとれたトリオ

リバーサイド時代のビル・エヴァンスは、新たな表現を追究する姿勢が前面に出ていて、それが凛とした香気を生んでいる。とりわけスタジオ録音盤は演奏が引き締まっていて、いっそう強くそれを感じる。ベースがスコット・ラファロからチャック・イスラエルに代わってもそれは変わらない。

bill evans how my heart sings

このトリオの評価はあまり高くないけれど、バランスの良さは歴代のエヴァンス・トリオで随一ではないだろうか。チャック・イスラエルのベースは美音で品格があるし、ポール・モチアンは躍動感のあるドラムで猛烈にスイングしている。

ヴァーヴ移籍以降、エヴァンスの演奏は徐々に耽美的な色を帯び、リバーサイド時代のような凛とした香気を放つことは二度とない。若さと成熟の両面を備えたこのトリオは、なかなかに味わい深いと思う。