Absolute Value

五輪狂想曲の真っ只中、新型コロナの感染者数は過去最高を更新したという。政治状況についてはもう何も語りたくない気分だが、五輪をめぐる不祥事の連続は
政治家だけが劣化したわけではないことを表している。問題の根は深い。

なんでこんな世の中になってしまったんだろうと考える。
迎合や忖度が出世の必須条件になったのは、教育の失敗というほかない。平気で迎合できるのは価値相対主義が行き着くところまで行ってしまった結果のように思える。1980年代、イデオロギーはおろか正義を語るのすら、かっこ悪いという風潮だった。個人が自分なりの価値観を確立しない限り、時代に流されるだけなのに。

中谷美紀 Absolute Value
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中谷美紀の声に耳を傾ける。このベストアルバムが発売されたのは1990年代末。いまから20年以上も前だが、まったく古びていない。 『Strange Paradise』のグルーヴィな間奏は坂本龍一だろうか。

時代に流されない「絶対価値」を自分の中に持つことは日本再生の条件だ。今の若者たちは学生時代にそれを見つける旅をしているのだろうか。

登米を訪ねる

緊急事態宣言下の五輪連休は、都内でダラダラしても仕方ない。老母の様子を見に帰郷することにした。
渋滞を避けて早朝に出発し、途中、宮城県登米に立ち寄った。北上川の舟運で石巻に農産物を運んだ小さな昔町だ。

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明治21年完成の高等尋常小学校校舎は重要文化財に指定され、教育資料館として公開されている。コの字型の木造建築は簡素で開放的。張り出した廊下を教師や生徒たちが行き交う様子が目に浮かんだ。

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武家屋敷通りには「登米懐古館」という、この町の宝物を収める施設がある。隈研吾の設計による建築が周辺の環境に溶け込んで美しい。

かつての中心地には旧警察署庁舎が建ち「警察資料館」として公開されている。通りはすっかり寂れてしまい、かろうじて商店街だったことがうかがえる程度だ。
この建物の見どころは、お白洲のような調べ所と留置所が建物内にあるところ。明治村でも見ることができないもので、こぢんまりした警察署だからこその面白さがあった。

小さな昔町を訪れると、豊かではないものの秩序ある暮らしの痕跡を見ることができる。それが安定なのか閉塞なのかはわからない。ただ、急進的な変化は多くのものを失わせ、決して人々を幸福にはしないように思う。
長期的視野で漸進的な道を進むこと。それがもっとも幸福をもたらすのではないだろうか。今のところそんな考えに至っている。

みずみずしい隠れ名盤

jimmy cobb marsalis music honors
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昨年ほぼ同じころに訃報に接したジミー・コブとエリス・マルサリス。上品なセンスが持ち味の名人たちの共演は、みずみずしくフルーティ。
伝統を受け継ぎながら古臭くなく、敷居が高いわけでもない。洗練された演奏はシブいとしか言いようがない。

快晴の白馬

八方池まで歩くか栂池を散歩するか、とにかく白馬方面に行こう。そう決めて朝4時に出発した。白馬に着くと、白馬鑓、杓子に大きな雲がかかっている。晴れない場合を考えて栂池に向かうことにした。

ゴンドラとロープウェイで標高1900mまで登る。どんどん天気が良くなっていく。
白馬登山のために栂池には何度も来ているが、自然園を目的地にしたのは初めてだ。1周3時間半、展望湿原まで行けば白馬大雪渓を歩く登山者が見えるという。前のめりの家人。もう行くしかない。

残雪の白馬が青空に映えて美しい。初めて見たときは雑草にしか見えなかったコバイケイソウも有り難く感じるようになった。

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花を見ながら緩やかに登っていく。チングルマミズバショウワタスゲニッコウキスゲゴゼンタチバナ、アヤメ、キヌガサソウ‥‥春と夏がいっぺんに来たようだ。
展望湿原にはベンチが階段状に設けられていて、みな白馬三山のほうに向かって座っている。まるで劇場のよう。山肌が目に近く、迫力の絶景が目の前にある。

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本当は白馬大池でのんびりテント泊をしたかったけれど、白馬エリアは山小屋もテント場も完全予約制。天気の様子を見て山行きを決めることができない。自由じゃなければテントじゃない。来年こそ、せめてテント場くらいは開放してもらいたい。

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中年の元気のなさこそ問題だ

梅雨明け宣言が出た。さぁ夏!というところだけれど、緊急事態宣言中では元気も出ない。野外ライブイベントも中止が決定。その影響は想像以上に大きくて、若者たちの間で政権に対する不満が高まっているようだ。投票行動にどうつながるかはわからないけれど、若者たちのエネルギーが爆発すれば、日本の政治は大きく変わるはず。期待したい。

夏のジャズフェスといえばハービー・ハンコック創価学会員ということもあって、毎年来日して元気な演奏を聴かせてくれたが、81歳という高齢になって、もう元気な姿を見ることはできないかもしれない。

Herbie Hancock trio live in new york
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トリオでの録音が極端に少ないハービー。77年と81年のCBS盤は貴重とはいえ、いずれも今ひとつ乗り切れない。トリオならこれがライブで見るハービーの姿に最も近い。

当時ハービーは50代半ば。爆発的なエネルギーはまだまだ若々しく創造的だ。事実この後、いくつも傑作を残している。ハービーの演奏を聴いて、日本は若者よりも中年が問題に思えてきた。

入笠山でマスク焼け

東京は週明けから4度目の緊急事態宣言。梅雨明けの便りはまだ聞こえてこないけれど、週末は久しぶりに太陽がのぞきそうだ。軽く歩きに行こうかと入笠山に向かった。

イカー規制があることを知らず、引き返してゴンドラに乗る。降りたところは標高1700mの高原で、半分雲に覆われた八ヶ岳が正面に鎮座している。
散歩程度で入笠湿原に到着。アヤメが真っ盛りで気分が上がる。

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山頂まで登った後は、マナスル山荘で名物のビーフシチューをいただき大満足。渋滞に巻き込まれることもなく帰宅し、夕方まで昼寝。あー、なんて緩い休日だろう。

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花を見ながらのんびり山歩きを楽しむなんて、数年前まで考えたこともなかった。これからはこんな山歩きもいい。
昼寝から覚めて鏡を見たら、日に焼けて赤ら顔なのに顔の下半分が白いオッサンがいた。

ピアノとヴァイブの清涼感

Gary Burton Real Life Hits
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湿度が高いと運動もしていないのに身体がぐったり疲れる。まとわりつくような汗に気分も萎えてしまう。カラッと涼しい音楽が聴きたい。そこで登場していただくのがゲイリー・バートン
引退した「山羊爺さん」の作品のなかでいちばんの愛聴盤が、この小曽根と共演したカルテット作。濃密なデュオではなく、リズム陣が加わったほうが清涼感が増す。選曲もいい。
ゲイリー・バートンはピアノカルテットでの録音が少ない。ピアノとヴァイブの音が近いからだろうけど、このフォーマットでの響きは梅雨の鬱陶しさを綺麗に拭き取っていくようなさわやかさがある。