ジョエル・フラーム ミーツ・ザ・リズムセクション

joel frahm we used to dance

期待のホープ、ジョエル・フラームも54歳、若手とはいえない年齢になった。
晩年のスタン・ゲッツを支えた名リズムセクションを迎えて、ワンホーンで臨んだこのアルバム、録音は2006年、17年前ということになるから、37歳ぐらい。
いい度胸というのか、怖いもの知らずというのか、堂々たるもの。

リズムセクションの職人たちは、いつも通り堅実で引き締まった仕事ぶり。1980年代後半以降、最高のリズムセクションだ。リーダーのジョエル・フラームは、芯のある音で、ここでも堂々としたプレイを聴かせる。
どうしてもゲッツと比べてしまうが、それは可哀想というもの。これはこれで快作。

このところリーダー作を目にしていないが、もう一皮むけてほしいプレーヤーだ。まだ54歳。期待したい。

非欧州的なスパニッシュ・ハードバップ

Ramon Fossati, Toni Solá & The Ignasi Terraza Trio The Black Key

トニ・ソラが参加しているのとジャケットが良い雰囲気なので入手してみた一枚。
スマートなサウンドをイメージしていたら、いきなりホレス・シルバー風の音が飛び出してきて面食らった。重心の低いサウンドも欧州的ではない。
でも、違和感を抱くのも最初だけで、安定感のあるリズムセクションに乗って、テナーとトロンボーンのフロント陣がファンキーにブロウ。徐々に心地良くなってくる。タイトル曲などは1950年代のジャズメッセンジャーズのよう。
小難しさの一切ないハードバップの快作。

バラードの名手ルイ・スミス

louis smith ballads for lulu

ブルーノートから2枚のリーダー作を発表したことでジャズの歴史に名を刻んだルイ・スミス。1作目の『Here Comes Louis Smith』はトランジションレーベルの音源をアルフレッド・ライオンが買い取ったものなので、ブルーノートでのリーダーセッションはチャーリー・ラウズを迎えたクインテットによる『smithville』のみ。
その『smithville』は「embraceble you」が印象的、というかこの一曲だけにあるといっても過言ではないと思う。終盤にチャーリー・ラウズがオブリガードをつけるだけで、ほぼワンホーン。まろやかな美しい音で伸びやかに歌い上げる演奏を聴けば、誰もがルイ・スミスが名手であると認めるはず。

それから30年あまりを経て発表された本作は、ワンホーンのバラード集。悪いわけがない。
『smithville』での「embraceble you」同様、伸びやかな美音でバラードを素直に演奏している。ピアノのジム・マクリーニーも好演。
やや一本調子ではあるものの、トランペットのワンホーン作として珠玉の名品といって良いだろう。さすがスティープルチェイス。ミュージシャンをよく理解している。

落下の解剖学

カンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した『落下の解剖学』を観た。
感情が爆発するシーンでも演技過剰にならず、抑制的な主人公の演技が素晴らしかった。夫婦間の関係が法廷で暴かれていく過程は迫力があって、2時間半緊張感が持続した。
後味の悪さを感じるのは、主人公の人間性に今ひとつ共感できず、疑惑が解消されないからだろう。そこまで計算づくなのだから、やはりフランス映画は一筋縄ではいかない。

下関が体現する諸悪の根源

相変わらずバカどもが表敬訪問のニュース。時代遅れもはなはだしい地方の"実力者"たち。それを報じるマスメディア。一刻も早くみな退場を願いたい。
あらためて、下関のふぐなど金輪際食べないと誓う。

名コンビによるミンガス集

pepper adams plays the compositions of charlie mingus

マイナーレーベルにのこされたペッパー・アダムスのミンガス曲集。
ペッパー・アダムスの野生味のあるバリトンはミンガスワールドと相性が良い。そこにハンクとサドのジョーンズ兄弟が加わって洗練されたミンガス集になった。

ドナルド・バードサド・ジョーンズといった知性派と組んで活躍したペッパー・アダムス。この作品の翌年に誕生したサド・ジョーンズ=メル・ルイス・オーケストラにも参加。さらに1966年にはmilestoneレーベルに『Mean What You Say』というシブい名盤をのこしたが、これもサド・ジョーンズとの共作だった。
ドナルド・バードとの双頭グループほど有名ではないけれど、サド・ジョーンズ=ペッパー・アダムスは名コンビだと思う。
かつてはこの人のバリトンが邪魔に思えたが、いまではペッパー・アダムスを聴きたくてアルバムを取り出すようになった。
バリトンという楽器自体マイナーなうえにマイナーレーベルの作品で注目されることがないけれど、プレイヤーとしてだけでなく、音楽家としてのペッパー・アダムスの力を感じる作品。