Here

水曜日は映画館がサービスデー。雨の中、散歩がてら映画を観に出かけた。
選んだのはベルギーのバス・ドゥヴォス監督の最新作『Here』。
配給元の前口上はこんな調子。

「誰の目にも触れない、植物学者と移民労働者が織りなす、些細で優しい日常の断片。他者と出会うことの喜びが、観る者の心をしずかに震わせる。バス・ドゥヴォス監督がその祝祭的世界観をさらに飛躍させた最新作。」

誰の目にも触れない?祝祭的世界観?
気取り過ぎでは?
手に汗握るエキサイティングなシーンはおろか、ストーリーらしきものもない。セリフも少なく、日常の断片を切り取ったシーンの積み重ねで出来ている。面白いはずがないし、眠気を誘われる。
でも不思議と印象に残る。雨の音、鳥の鳴き声、植物の深い緑色‥‥。この映画は観る者に繊細な感性を要求する。

ヴェンダース『PERFECT DAYS』、アキ・カウリスマキ『枯れ葉』、そしてこの『Here』。いずれも、社会の片隅でささやかな幸せを感じながら生きる人々を描いている。そういう時代なのか、あるいは無意識のうちにそういう映画を選んでいるのだろうか。