「ブルー・パール」が聴きたくて

bud powell the amazing bud powell vol 3

バド・パウエルディスコグラフィのなかで、このアルバムが地味な位置付けになっているのは、後半のカーティス・フラーを含むカルテットの演奏のせいだろうと思う。
カーティス・フラーをフロントに迎えて録音することになった経緯は、中山康樹『超ブルーノート入門』に記されている。それによれば、アルフレッド・ライオンが地下鉄でカーティス・フラーとばったり出会い、録音への参加を呼びかけたという。4年ぶりの録音となるパウエルへの不安が背景にあったようだが、フロントがカーティス・フラーのみでは役不足。ライオン自身が反省しているように、トランペットかテナーか、ホーンをもう一つ加えていれば、もっと良い作品になっていたに違いない。

とはいえこの作品、ブルーノートのなかでは聴きやすくてパウエルを聴こうとするときには取り出すことが多い。スローブルースからはじまるのもシブいが、なにしろ名曲「Blue Pearl」が収録されている。「クレオパトラの夢」は飽きてもこの曲は飽きることがない。
ここにはかつての鬼気迫るパウエルはいない。しかし内省的で多面的なパウエルの貌が見える。