渡欧で開運したデューク・ジョーダン

duke jordan duke's delight

リチャード・ウィリアムスつながりでこのアルバムを取り上げておこうと思う。フロントにリチャード・ウィリアムス、チャーリー・ラウズを迎えてのデューク・ジョーダン、1976年のリーダー作。

デューク・ジョーダンも地味なピアニストだから、地味の三乗といったシブいメンバー構成。でもリーダーが地味ならサイドも地味なメンバーを揃えたほうがバランスは良い。ジョーダン自身の『危険な関係のブルース』、ソニー・クラークの『Leapin' And Lopin'』はそのいい例。偶然か否かどちらもチャーリー・ラウズが参加している。チャーリー・ラウズが参加すると演奏は落ち着き、裏町感が漂う。

この作品も同趣向の一枚で、佳曲揃いの好盤。リチャード・ウィリアムスはよく歌い、チャーリー・ラウズは円熟味のある演奏を聴かせる。このセッションのドラムにアル・フォスターを起用したのはスティープルチェイスのオーナー・プロデューサー、ニルス・ウィンターの慧眼。サウンド全体を引き締めながらサム・ジョーンズとともに推進力を発揮している。やはり目利きのプロデューサーの存在こそレーベルの生命線だ。

米国で仕事にあぶれ渡欧したデューク・ジョーダンだが、渡欧後はスティープルチェイスというレーベルに恵まれたことで大きく運が開けた。人気ピアニストとして名を高め、日本のレーベル3361 Blackに畢生の名作『Kiss of Spain』を録音することにもつながった。
同じく渡欧で開運したピアニスト、ケニー・ドリューと比較すると、プロデューサーとの出会いに恵まれたのはデューク・ジョーダンのほうかもしれない。