コマウスユキソウ

今年は久しぶりに縦走をしたい。でもテントを背負って歩く自信がない。そこで手近な木曽駒ヶ岳で足慣らしすることにした。
標高2612mの千畳敷カールまでバスとロープウェイで運んでくれる。そこから頂上直下のテント場までは1時間半程度。テント装備で最初の足慣らしにはちょうどいい。

中学生の学校登山に混じって八丁坂を登る。平日朝一の登山客は日帰りがほとんどで、テント場確保に急ぐ必要もなく気楽だ。テント場で先に張られていたのは3張ほど。一等地にテントを設営し、朝9時半には散策に向かった。

20年ぶりに木曽駒ヶ岳の山頂を踏み、頂上から北東に伸びる馬の背と名付けられた気持ちの良い稜線を歩いていると、見事なお花畑が目に入ってきた。斜面いっぱいに広がるウスユキソウの群落だ。

コマウスユキソウという木曽駒ヶ岳の固有種だという。薄雪草という儚げな名も良いが、エーデルワイスという清々しい響きもいい。スイスアルプスをイメージするのは映画『サウンド・オブ・ミュージック』による刷り込みだろうか。

今年は雪解けが早かったため、チングルマハクサンイチゲはすでに終わりかけていたが、頂上近くではチングルマの花畑が残っていた。翌朝は快晴。木曽駒ヶ岳の頂上で初めて360度の展望を楽しむことができた。

それにしても歳をとるにつれ花に惹かれるようになるのは、なぜなんだろう。ひっそり静かに生命を咲かせる姿に自分を重ねているのだろうか。そんな自覚はないのだけれど。