小鹿田の里

録画していたNHK美の壺スペシャル 「日本の美・再発見〜民藝が遺した美しきモノ〜」を見た。6年前の再放送らしいけれど、訪ねた土地、馴染み深い店が次々と登場して嬉しくなった。
なかでも新たな驚きがあったのは小鹿田。かつて訪れたときに、なんだかユートピアのようなところだなと感じたが、理由があることがわかった。

f:id:milesmode:20211109000918j:plain

小鹿田の里では、10軒の家が一子相伝、つまり一人のわが子に技術を伝えて焼きものづくりを行う。一軒にろくろは2つまで、弟子や職人を外部から入れることは禁じられている。そして窯は共同。まるで共産主義国のようだ。

小鹿田を訪ねたとき、どこでも同じようなものを売っているのが不思議で、物足りなく感じたことを記憶している。そして他の焼きものの里に比べて、かなり安かった。それは上のような仕組みになっているからだとわかり、目から鱗が落ちる思いだった。

小鹿田の里にはゆったりとした時間が流れている。
10軒の家々で一つの共同体を形成し、個性を競うことは排除されている。それはある種のユートピアである一方、共同体内では息苦しさもあるだろうし、競争を制限することによって果たして活力を維持できるのかという問題を孕む。
番組ではその辺りを意識した編集がなされていた。田舎ながら権威主義的ではない共同体のあり方は美しい。「日本でいちばん技術力のある集団でありたい」という若手の職人の言葉が心強く思えた。

f:id:milesmode:20211109124456j:plain