妖怪の孫@吉祥寺

こんな映画を観に行くのは年寄ぐらいだろうと思いつつ、アップリンク吉祥寺まで出かけた。
小さい劇場ながらほぼ満席。70代が多いとはいえ40代も結構いて、予想外に年齢層は幅広かった。都内でも新宿ピカデリー以外はマイナーな小劇場でしかやってないせいなのか、あるいは文化度が高く比較的リベラルな土地柄だからなのかはわからないが、客入りは上々のようだ。

映画としての出来がどうかといえば、終わり方は変だし、途中で挟み込まれる「妖怪キャラ」もあまり感心しない。でも、最初から最後まで楽しめたし、こうして映画になることで記録的価値は大きい。元共同通信社野上忠興の「安倍晋三は母親の洋子を憎んでいた」という証言や、自民党の重鎮たちが「本気で大日本帝国憲法へ回帰させたがっている」という小林節教授の証言は興味深かった。なにより製作に携わったスタッフの心意気に拍手を贈りたい。

久しぶりに安倍晋三の映像を目にし、このせせこましい男は現代の日本人を象徴する人物だと納得せざるを得なかった。三代にわたる系譜は日本の現代史そのもの。だが三代目の劣化ぶりは突出している。学がなく努力もせず、要領だけを身につけた男に国家観などあろうはずもない。日本の戦後とはいったいなんだったのだろうと考えさせられる。平和憲法の下でわがままに育ち、贅沢な生活を謳歌し、好き放題権力を振り回した人間が、その憲法を否定するのだからねじれている。

企業や家は、たいてい三代で没落する。自民党の政治家はもはや三代目の時代に突入している。政治がダメなのは必然なのだ。原発事故というカタストロフが来ても日本は変わらなかった。格差と分断はまだまだ広がり続けるのだろう。