戦前の気配


安倍晋三が射殺されるという衝撃的なニュースが日本中を駆けめぐった。犯行動機は統一教会に家族を壊された容疑者が、同教会と密接な関係にある安倍晋三を狙ったものだという。安倍一族が統一教会と深い関係にあるのは確かとはいえ、強い殺意を抱く理由としては筋違いで納得しにくい。真実が明らかにされることはないかもしれない。

格差拡大と農村の貧困が社会問題となった昭和初期、昭和維新を謳ったテロが発生、やがて日本は破滅への道を突き進んでいく。日本維新の会の躍進が予想される令和の今、元首相がテロで暗殺された。戦前の気配が漂いはじめた。暗殺翌日の新聞各紙の朝刊見出しが『安倍晋三元首相 銃撃され、死亡』でほぼ統一されていたのも気になる。

民主主義へ挑戦を続けてきた元首相が射殺されたことを"民主主義への挑戦"と評するのは、的外れもはなはだしい。個人的関係として優しい人だったというのは勝手だが、民主主義を破壊してきた愚人とその取り巻きは歴史に裁かれる。