平成5年のダービー馬ウイニングチケットが死んだ。33歳というから大往生だ。ずいぶん前のことだが浦河のAERUまで会いに行ったことを思い出す。
ウイニングチケットは柴田政人をダービージョッキーにするために生まれたような馬といわれる。ダービーの最後の直線で柴田が「ウイニングチケットを担いで走りそう」だったと言った人がいた。その言葉どおりの鬼神のような追い方とゴール後の脱力した様子が目に焼きついている。
ダービーで燃え尽きたように思える名馬がいる。柴田政人のウイニングチケット、河内洋のアグネスフライト、岩田康誠のディープブリランテ、横山典弘のロジユニヴァース、福永祐一のワグネリアンなどだ。
これらの名馬たちが、まるでベテランジョッキーにダービーを勝たせるために生まれてきたかのように思えるのは、競馬関係者たちの絆と想いの強さがダービーというレースに凝縮されているからにほかならない。
ウイニングチケット死すというニュースに接し、平成すら遠くなった感を抱いた。これから先、競馬は物語を必要とするのだろうか。