石原慎太郎の死

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石原慎太郎が亡くなった。
この人は良く言えば「純粋」、悪く言えば「単純」な人だったように思う。人を信じ人に利用された89年。最期は治療の痛みに怯え、死への恐怖に苛まれていたようだ。そういう点では三島由紀夫とは対照的といえる。

昭和が終わって30年以上経つ。石原慎太郎の死は昭和がまた遠くなったことを感じさせる。しかし、石原から川淵三郎橋下徹と、このタイプは根強い支持を得ている。それはマッチョ志向が屈辱感や恐怖心から芽生えるものであるということが共通認識になるまで続くのだろう。

既成の価値観に反逆する新時代の旗手から家父長的国粋主義者へと転向した石原。その理由はわからない。ただ、若き石原慎太郎橋川文三に徹底批判され、小説家として挫折を味わった。これをきっかに政治の道に進んだといわれる。その橋川文三に師事したのが猪瀬直樹。石原と猪瀬は橋川文三を介して同志的に結びついたと考えられる。それは当事者たちにとって心地よい関係だったのかもしれない。

村上春樹の小説に「人生はジョン・ウェインの映画じゃないのよ」という台詞があったが、石原慎太郎の人生は虚構だったのではないかと思ってしまう。
令和のいま、石原の亡霊を消せるかどうかが問われるといったら死者に失礼だろうか。

問題発言や差別的な思想で近隣国との関係を悪化させるなど容認できない人物ではあったが、自分の言葉で語り、愛情を感じさせるあたりが人気に繋がっていた。ひとを揶揄うような表情が魅力的でもあった。合掌。