ジョン・ルイスは最高なんだけど

john lewis slavic smile

ジョン・ルイスミルト・ジャクソンは音楽の方向性が異なるにもかかわらず、MJQとして長年活動を共にした。1974年にミルト・ジャクソンが脱退するとMJQは解散。ところが7年後の1981年には、まるで熟年離婚した夫婦がヨリを戻すかのように再結成した。

その矢先の1982年に、ミルトではなくボビー・ハッチャーソンをパートナーに迎えて日本のBaystateレーベルが録音したのが、この作品。John Lewis & The New Jazz Quartetというグループ名からは、単なるセッションにはとどまらない意思がうかがえる。

MJQを再結成したばかりなのに同じ楽器編成で録音し、しかもグループ名まで名乗るとは、いったいどういう了見だろう。ミルトへのメッセージとしか考えられない。

これぞMJQという雰囲気の名曲「Slavic Smile」で幕を開けるこの作品を聴くと、「ミルトじゃなくても魅力的な音楽が作れるのさ」というジョン・ルイスの声が聞こえてくるようだ。
「Hornpipe For The Queen」のスウィンギーなピアノは最高だし、さすが巨匠の二人、抜群の安定感でとてもよい作品なのだけれど、すっきりしないものが残る。

John Lewis & The New Jazz Quartetは、結局この一作で終わった。ジョン・ルイスは、やはりパートナーはミルト・ジャクソンだと思い至ったのだろうか。それともセールスが不調だったのだろうか。
いずれにせよ、Baystateレーベルは嫌みなことをしたものだと思う。イラストをあしらったオリジナルのジャケットセンスも醜悪で、後のヴィーナスレーベルの源流がここにある。
ジョン・ルイスは最高なんだけど、いろいろ残念な名品。