巨漢と巨人の巨匠たちによる名盤

Oscar Peterson Trio with Milt Jackson
Very Tall
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口数の多い男は好まれない。それはジャズも同じだ。
ソニー・クリスは若い頃ペラペラと吹いて薄っぺらだったし、コルトレーンは無機質な音を垂れ流して失笑を買った。フレディ・ハバードは天才だが大言壮語で大ホラ吹きといった印象で、拍手喝采は浴びたものの愛されることはなかった。
ちょっと言いすぎたが、テクニシャンはどうしても技をひけらかしがちで、若い頃はそれが顕著に出る。
オスカー・ピーターソンの場合は、淀みなく能弁だが、そのぶん苦悩も哀しみも抱えていないように思えてしまう。例えは良くないが、話が上手い保険のセールスのよう。
そこで、オスカー・ピーターソンはこっそり聴かねばならなくなる。「ジャズでは誰が好き?」と問われて「オスカー・ピーターソン!」と元気良く答えるほど、ジャズファンは素直な人種ではないのだ。

そんなオスカー・ピーターソンのトリオにミルトジャクソンを加えるという秀逸なアイデアを思いついたのは誰だろう。ミルトジャクソンという人は、誰と共演しても良い演奏を残す。ジョン・ルイスはもちろん、モンクでもハンク・ジョーンズでもバッチリだし、レイ・チャールズとの共演だって最高だ。
なかでもピーターソンとの相性は抜群、というか、ミルトが加わることでオスカー・ピーターソンの魅力は輝きを増す。この作品は両者にとって代表作と言ってよい。
ただ、Very Tallというタイトルはいただけない。2人とも背が高かったことからつけられたようだが、もう少しなんとかならなかったのかしら。