ヘレン・キーンのプロデュース力

art farmer blame it on my youth
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1988年発表のこのアルバムは、アート・ファーマー60歳時の録音。長いキャリアの後期にあたるとはいえ、まだまだ現役バリバリだったはずだが、当時はすでに過去の人といった印象があった。国内レーベルでバラード作品ばかり録音したり、ジャズテットを再結成したりと、懐古的な音楽活動をしていたからだろう。

いまあらためてこのアルバムを聴くと、ベテランならではの落ち着きと、ほどよい緊張感で引き締まった演奏になっていることに気づく。フレッシュなリズム陣によるところが大きいのはもちろん、プロデューサーにヘレン・キーンを迎えたこともクオリティの高さにつながったのかもしれない。
数多くのリーダー作を残したアート・ファーマーだけれど、『Cool Struttin'』でのプレイをはじめ、どちらかといえばサイドで輝くタイプ。いかつい顔とはウラハラの瑞々しいトランペットは良きパートナーを得て輝きを放つ。ここではビル・エヴァンスのマネージャーを長く努めた敏腕女性プロデューサーによって魅力を引き出されているように思う。