デイヴ・パイクはもっと評価されていいミュージシャンだと思う。唸り声のせいか、ラテンを演ったりジャズロックをやったりと流行に飛びつくのが嫌われたのか。はたまた相当の女好きだったらしいから、人間性が疑われるようなことでもしたのか。いずれにせよミルト・ジャクソンやゲイリー・バートン、ボビー・ハッチャーソンらの人気には足元にも及ばない。
この人のヴァイブはとにかくよく歌う。幸いにもバリー・ハリス、ビル・エヴァンス、シダー・ウォルトンという異なったタイプのピアニストをバックにした3つのアルバムを残している。ビル・エヴァンスが参加した『pike's peak』が代表作には違いないけれど、他の作品だって負けてはいない。
dave pike it's time for dave pike
『pike's peak』 が1961年11月の録音、それより数ヵ月早く録音されたリヴァーサイド盤は、バリー・ハリスがバックを務めている。ビリー・ヒギンズのドラムがちょっとうるさいけれど、豪快な歌いっぷりは一番だ。ジャケットに記されたニュースター誕生といった惹句が眩しい。『どうだい?色男だろ?」と言っているかのようなポートレートからは自信が溢れている。
dave pike pike's groove
クリスクロスにはシダー・ウォルトントリオを従えた『pike's groove』という作品がある。こちらは比較的しっとりした仕上がり。大好きな「birk's works」も入っていて、これがまた素晴らしい演奏だ。奇しくもドラムは同じくビリー・ヒギンズ。こちらは1986年の録音。最初の2作との間には25年の歳月が流れている。
ジャケットを見る限り往年の色男もすっかりヨレヨレの親爺になってしまったが、演奏ぶりは変わらない。この間ラテンやジャズロックを演ってきたが、デイヴ・パイク本人は何も変わらなかった。変わったのは時代だけだった。きっと助平ぶりも変わらなかったに違いない。