ハル・ウィルナーの仕事

kansas city original motion picture soundtrack
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ニーノ・ロータやクルト・ワイル、モンク、ミンガスへのトリビュートアルバムで有名なハル・ウィルナー。昨年春covid-19で64歳という若さで世を去った彼の素晴らしい仕事のひとつがこれ、ロバート・アルトマン監督の『Kansas City』のサウンドトラックだ。
現代最高のミュージシャンたちを起用して、猥雑なジャズクラブで演奏されるオールドスタイルのジャズを再現してみせたこの作品は、映画を観ていなくても十二分に楽しめる。

禁酒法時代のカンザスシティは違法営業のナイトクラブでバンドが演奏し、マフィアが暗躍する街。チャーリー・パーカーが生まれ、カウント・ベイシーが名をなしていったこの街で、ジャズは猥雑さといかがわしさを増したに違いない。
刹那に生きざるを得ない黒人だからこそ、アドリブという瞬間芸を競ったのかもしれないし、骨の髄まで染みついたブルースとラジカルに飛翔するアドリブをビバップに仕立て上げるには、チャーリー・パーカーには麻薬が必要だった。カンザスシティはジャズを培養する条件を備えていた。

アウトテイクの続編とあわせて、この猥雑でいかがわしい世界にどっぷり浸かると、カンザスシティに行ってみたくなる。

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