ジャズを聴き始めた頃、アイドルはフィル・ウッズだった。抜群のテクニックとスピード感で情熱的に歌い上げる、その演奏スタイルはパーカー派とはいえ、ブルースとは無縁。ポップでわかりやすかった。
フィル・ウッズは1950年代から2015年に亡くなるまで長く活躍を続けたが、ピークは1970年代だと思う。
この時代のフィルのアルトの音は伸びやかで柔らかい。ヨーロピアンリズムマシーンのハードな演奏から変化したのは、ミッシェル・ルグランとの出会いの影響だろうか。
スティーリー・ダンやビリー・ジョエルのアルバムで聴くことができる都会的なアルトサックスの響きは、1970年代という時代そのもののように思える。