ズート・シムズの生き方

zoot sims kenny drew quartet complete live recordings

スタン・ゲッツズート・シムズは、ともにレスター・ヤングの系譜を継ぐ白人のテナージャイアンツ。二人とも柔らかい音で流れるように歌う。歳も2歳しか違わない。そんなことから比較されがちだ。

二人を比較するといかんせんズートは旗色が悪い。
あくまでもスインガーのズートの演奏に意外性はない。聴いているうちに鼻歌を歌いたくなる。先がわかってしまうのだ。
一方、ゲッツのアドリブは先が読めない。孤独感を感じさせ、どこか他人を寄せつけない雰囲気がある。翳りがあるゲッツに対して明るくスイングするズート。屈折した精神を抱える人から支持されるのはどちらか、勝負は見えている。ゲッツの人気に比べると、ズートは地味な存在に甘んじている。

そんなズートの金太郎飴的演奏がたっぷり詰まった2枚組CDを入手した。バックを務める豪華メンバーに惹かれたのだが、目当てのケニー・ドリューは、いたって凡庸な演奏に終始している。ジャッキー・マクリーンの『Bluesnik』、デクスター・ゴードンの『One Flight Up』といった名盤を支えたブルージーでガッツのある演奏は聴かれない。
とはいえズートに限っていえば絶好調。演奏が進むにつれ暑くなっていく様子が伝わってくる。歌心に溢れた安定感のある演奏には惚れ惚れしてしまう。ケニー・ドリューがバラード上手だったなら、ズートの違った一面も引き出せたのではないかと想像するものの、気楽に楽しめるライブ盤だ。

インプロヴァイザーとして進化し続けたスタン・ゲッツ、テナー職人として自らのスタイルを貫いたズート・シムズ。いまはズートの生き方にも惹かれる。進化は絶対ではない。