少し愛して、なが〜く愛して

Eddie Higgins Zoot’s Hymns

エディ・ヒギンズのピアノは耳ざわりが良く聴きやすい。そんな資質を買われたのか、晩年、ヴィーナス・レーベルの看板ピアニストに迎えられ人気を集めた。
一方で、柳の下のどじょうを狙うヴィーナスが同路線のアルバムを次々とリリース。しだいに飽きられジャズファンからそっぽを向かれてしまった。

ケニー・ドリューの売り方をそのまま真似したやり方はいただけない。商売と文化のバランスをとることに自覚的でなければどんどん劣化する。アルファ、ヴィーナスには良い作品も少なくないだけに、もったいない。

ズート・シムズに捧げたこの作品は、エディ・ヒギンズの品の良さが発揮された佳作。ピアノトリオとズート風テナーが加わるカルテットの演奏が交互に出てきて飽きさせない。トリオではズートを感じさせることはないが、カルテットになると俄然ズート感が出る。
Hymnsは讃美歌という意味らしいが、simsとHymnsをかけたと思われるタイトルも洒脱。

アルバム全体がうまく編集されているし、無名のメンバーでも演奏のクオリティは高い。エディ・ヒギンズ自身が共同プロデュースとして名を連ねていて、このピアニストがプロデュース能力も高かったことを示している。
ヴィーナスで脚光を浴びることになったが、本来はひっそりと愛されるべきピアニスト。ここにはかつてのサントリー・REDのCMではないが、ひっそりと長く愛される、素のエディ・ヒギンズがいる。