追悼 山田太一

脚本家の山田太一が逝ってしまった。
この人のドラマからは多大な影響を受けた。とりわけ『男たちの旅路』『早春スケッチブック』は刺激的だった。
世代間の対立や価値観のぶつかり合い、そこから生じる煩悶と葛藤を描いた作品群は、見る者にいかに生きるべきかを問い、物事の本質を考えるように迫るものだった。

ふぞろいの林檎たち』以降、山田太一のドラマが輝きを失ったように感じるのは、日本社会が1980年代半ば以降、価値観のぶつかり合いや葛藤を避け、丸くおさめようという風潮に覆われたのと無縁ではないだろう。
優しく柔和な表情の裏側に、人知れず重荷を背負っていたに違いない山田太一。長い晩年のなかで、日本社会をどのように見ていたのだろう。享年89。合掌。