幸せを届ける仕事


ぶどうの収穫と出荷が終わった。
今年はシャインマスカットの栽培面積が広がって収穫量が増えたところに、原発汚染水の海洋放出で中国・香港への輸出が途絶したため、シャインマスカットの価格が大幅に下がったと報道された。
確かに農協の買取価格は下がったけれど、大粒・大房のものはそれほど下がった感じはしない。参入したばかりで小さい房のシャインが増え、これらがスーパーで叩き売り状態になっている。一方で房が立派なものは高値が続いていて、価格の幅が広がったように思う。所得格差の広がりがぶどうの価格を二極化させているようにも思える。

安くなったとはいえ、美味しそうに見える房となると、スーパーでも一房1500円以上したりする。この価格では買うのをためらう人が多いのではないかと思う。
このまま日本の没落が続くとシャインマスカットは金持ちと外国人の果物になってしまうのではないだろうか。

今年初の試みとして、形が悪かったり小さすぎたりする房など、そのままでは売ることができないものをバラして、組み合わせて一つの房のようにして安く売ってみることにした。軸に着いたままなら気分は損なわれない。もちろん味も変わらない。バラの組み合わせは産地ならではの売り方だ。
地元の人が買いに来る農協直売店に置いたところ、これが飛ぶように売れた。端末でリアルタイムで見ていると、あっという間に売れていく。やはり、皆食べたいけれど高くて買えない人がたくさんいるのだ。

果物は人を幸せな気分にする。そんな仕事ができるのが嬉しい。
産地で美味しいぶどうを安く買えないようでは、まるで都会の植民地。品質を高めて高値で売るだけでなく、直接買いに来てくれる人をはじめ、たくさんの人にささやかな幸せを届けたい。
来年もがんばろう、単純にそう思えることに感謝したい。