ロストケア

かみさんに連れられ、映画『ロストケア』を観に行った。興味もなく当然ながら予備知識もいっさいなし。どんな話かもまったく知らずに行ったが、最初から最後までスクリーンに釘づけになった。
構想から映画化まで10年、脚本は23稿を数えたという。練りに練ったシーン展開、松山ケンイチ長澤まさみをはじめ、出演者たちの演技力も特筆もの。
理不尽なまでに自己責任が求められる冷淡な社会、絆と呪縛が絡み合う介護の現実。正義とは何か、どのように死を迎えるか、単純に答えが出せない問いが突きつけられる。エンドロールが終わり明るくなった劇場には、重苦しさと所在のない気まずい空気が漂った。
介護をめぐる問題を取り上げたヘビーな内容なのでヒットすることはないと思うけれど、ここ最近観た日本映画では出色の作品だった。
経済的豊かさを追い求めてきた先に待っていた地獄。この国の政治はいったい何をしているのか。底流にある怒りに映画人の気骨と微かな希望を見た。