リー・モーガンの代表作は

リー・モーガンの代表作というと、必ず『Candy』があがる。でも『Candy』はリーの個性であり魅力であるヤクザな節回しとスピード感溢れるアドリブが封じ込められている。リラックスムードのやや弛緩した演奏が詰まっていて、それほど良い作品とは思えない。
では代表作は何かと考えると、これがすぐには出てこない。『Lee Way』は好きな作品ではあるけれど、調子が今ひとつでキレがなく代表作とするには憚れる。『Vol.3』でもなければ『The Sidewinder』でもないし、『Here's Lee Morgan』も決定力に欠く。

リーダー作よりもジャズメッセンジャーズでの演奏のほうがリー・モーガンらしさが発揮されているようにも思うけれど、リーダー作なら、もしかしてこの未発表作品こそ代表作にふさわしいのではないだろうか。

Lee Morgan Tom Cat
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録音は1964年。『The Sidewinder』と同時期だ。フロントは、ジャッキー・マクリーンカーティス・フラーとの3管。リズム陣は、マッコイ・タイナー、ボブ・クランショウ、アート・ブレイキーという布陣。ドラムにブレイキー御大が座ったのが効いて、これぞハードバップという気合十分の演奏が続く。このころのジャッキー・マクリーンは絶頂期。迫力あるアドリブラインを展開し、リー・モーガンとの相性の良さは抜群だ。最近再発された模様だが、ブルーノートらしいジャケットデザインでの再発を期待したい。

ここでのリー・モーガンハードバップの枠組みのなかで 最高に輝いている。この後リー・モーガンはモードという新しいイディオムに挑戦していく。それは必ずしも成功を収めたとはいえないけれど、フレディ・ハバードを後継者として磨き上げられていった。頂点を極めた者が果たすべき役割とは、成果よりも新しい挑戦を通じてスピリットを伝えていくことなのだろう。