日野元彦の魂

日野元彦sextet Tac Tic
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日野元彦が亡くなって20年が経った。彼の遺した音源を聴いていると、いまさらながら53歳という若さで亡くなったことを残念に思う。
若手ミュージシャンを揃えたこの作品は、テナー、アルト、トランペットの3管でスリリングで切れ味のよい演奏を聴かせる。とりわけ新しいことをやっているわけではないが、メンバーが提供している曲の良さもあって文句なく楽しめる。

ライナーノーツで日野元彦は、ニューヨーク録音作(『It's There』『Sailing Stone』』)で満足いく作品ができたので、もうリーダー作をつくるつもりはなかったと語っている。大西順子に「3管みたいなセッションやりましょうよ。トコちゃんがリーダーになって」と言われたことがきっかけで、日本にはアートブレイキーのような存在が必要だと考えるようになり、若手の録音機会をつくることにしたという。ここで聴かれる演奏は、まさに現代版ジャズメッセンジャーズ。個人的にはニューヨーク録音作よりも、こちらの作品のほうが好きだ。

きっかけを与えた大西は、日野の急死後、活動を休止、いったん復帰した後、2014年には引退した。それを再復帰させたのが、兄の日野皓正というのはなんだか因縁めいている。