田村翼 Ballad for Hamp
ジャケットでドン引きしてはいけない。
歯切れの良さはハンプトン・ホーズ譲りだし、バラードではタッチの美しさが際立つ。ミディアムテンポのバップフレーズで綴られる情感はたまらない。ラストの表題曲「Ballad for Hamp」は田村のオリジナルで哀愁の名曲。作曲の腕も確かだ。
田村翼は「知る人ぞ知るピアニスト」らしい。活動拠点が関西だったせいか、全く知らなかった。メディアにもあまり取り上げられなかったようだ。マッコイ・タイナー系が席捲する日本のジャズシーンで、関西在住のバップピアニストに光が当たることはなかったのだろう。
Nelson's Navigatorというブログに田村翼に関する情報が詳しく掲載されている。それによると癌に冒され1995年に55歳という若さですでにこの世を去っている。
不幸中の幸いというべきか、数点の作品が残された。ストリーミングでいくつか聴くことができるようになっているが、ほとんどが入手困難。中古市場では高値がついているらしい。一部マニアだけの知る人ぞ知るピアニストにしてはいけない。いつでも入手できるようにしてもらいたい。
「虎は死して皮を留め人は死して名を残す」という。傑作を残した田村翼は、ジャズファンの記憶に刻まれるピアニストとなった。
