中庸と凡庸のあいだ

Ron Carter The Bass And I
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ティーヴン・スコットは、マルグリュー・ミラーの後継者的な立ち位置のホープだった。デビューも早く、ロン・カーターソニー・ロリンズのバンドメンバーとしてキャリアを重ねた。でも、マルグリュー・ミラーほどの評価を得ることはできず埋没してしまった感がある。まだ51歳と若いので、過去形にしては申し訳ないけれど。

マルグリュー・ミラーが非凡な中庸さを発揮したのに対して、スティーヴン・スコットのピアノは時折輝きをみせるものの、全体としては印象に残らない。一聴でそれとわかる個性が希薄だ。
しかし、良いピアニストであることは確かで、個性の希薄さがちょうど良い按配に働くときもある。

それが日本人に人気の名曲を集めたsomethin' elsのこの作品。中庸と凡庸のあいだを行き来するスティーヴン・スコットのピアノによって、結果的に飽きのこない作品に仕上がったといえる。
ウィリアム・クラクストンにしては、やや陰影が足りないジャケット写真同様、名盤一歩手前の佳作。