アートファーマーのヴィジュアル問題

 

アートファーマーの名盤とされる『Art』だけど、長年聴いたことがなかった。アトランティックの諸作や日本制作盤を聴いても今ひとつピンとこない。アートファーマーはワンホーン向きではないと思っていたのだ。

このところ、アートファーマーを再評価しないといけないと思いはじめ、ゲットしたのが『Art』と『Perception』の2枚がカップリングされたこのお得盤。

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2in1は好きではないけれど、これはいい。なにしろ全く期待していなかった『Perception』が良かったのだ。

アートファーマーのアルバムのなかでも『Perception』はなかなか手が伸びないアルバムではないかと思う。ピアノは『Art』のトミフラに対して、こちらはハロルド・メイバーン。いいピアニストだけど狭間の世代で、マッコイ・タイナーの陰に隠れてしまった感がある。バックのトリオが地味なうえに、なにより『Art』の上品なイメージに対して、このジャケットはかなり分が悪い。

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ゴリラの大写しとなった『モダンアート』のジャケットよりはマシとはいえ、こんなふうにカッコつけるキャラじゃない。コンテンポラリーの『Portrait of』でもタバコを燻らしていたが、「チェットよりイケてるだろ、オレ」とでも言ってそうだ。

この点、日本制作盤はわきまえている。顔は一切出さずに、ちと軟派なジャケットデザインでアートファーマーを売り出し、見事成功を収めた。でもワンホーンのアートファーマーなら『Perception』のほうが断然いいと思う。