神童の成熟

2015年に『My Favorite Things』でデビュー、神童と呼ばれたジョーイ・アレキサンダー。メディアではこの年のベストアルバムに選ぶ人も多かったものの、当時11歳。いくらなんでもまだ子どもじゃないかとスルーしてしまった。

それから8年、ディスクユニオンで物色していたところ、流れてくる音に耳を奪われた。
誰のアルバムだろうと気になり、レジ前まで確認に行った。ジャケットにはTシャツ姿の見慣れぬアジア人が写っている。

Joey Alexander Continuance

神童は20歳になっていた。
この最新作では、シオ・クローカーを迎えて、洗練された美しい音楽を聴かせてくれる。
チック・コリアとミッシェル・ペトルチアーニ、ブラッド・メルドーをミックスしたような華麗でメランコリックなピアニズム。アジア的湿度で歌い上げるバラードプレイ。キース・ジャレットのようにフォーク、ゴスペル風の曲もある。何をやっても、この人のピアノはエレガントだ。
シオ・クローカーのクールで憂いのあるトランペットも絶妙。全曲オリジナルだが、いずれもメロディアスな曲ばかりで小難しさはない。

8年間スルーしていたことを後悔し、すぐに旧作も入手した。まだ20歳。これからどう変わっていくのだろう。ワクワクさせられる天才だ。