猥雑でヤクザなジャズを聴きたくなったら

tiny grimes callin' the blues

このアルバム、かつて『ジャズ批評』(だと思うけど)で「私の好きな一枚のレコード」といった特集をやったときに片岡義男が紹介していた。内容は覚えていないが、大人とはこういうものだと思わせる説得力があって、片岡義男ファンではないけれど、カッコいいなぁと思った。それだけは覚えていて、かなり後になって中古でみつけたときに買った次第。

ジャズとR&Bの中間のようなオールドスタイルの音が飛び出してくる1曲目からいい雰囲気だ。エディ・ロックジョーのテナーが入ってくるあたりから、ジャズっぽさが漂いはじめ、レイ・ブライアントが品の良いソロで引き締め、トロンボーンのJ. C. Higginbothamがゆったりとした時間を醸す。2曲目以降もジャムセッションでグルービィーな演奏が続く。
ジャズが米国のブラックミュージックから欧州の白人インテリによる音楽へと中心軸を移しつつあるいま、ときおり無性にこういうサウンドを聴きたくなる。
進歩的なジャズ批評家たちは「ジャズをブラックミュージックと捉えてはいけない」というけれど、不良性がなくなって漂白されたジャズは、脳内音楽になって大衆性を失う運命にある。ジャズはブルースから遠く離れてほしくない、と思う。