大阪中央公会堂に船場の心意気を見る


大阪・中之島の中央公会堂。赤レンガの壮麗な建物が水辺に映える。内部にちょっとした展示室があって、建設の経緯が紹介されていた。
それによると、この大阪のシンボルともいえる建物は、船場の両替商の家に生まれた相場師、岩本栄之助の寄付で建設されたという。しかも、岩本は建設中に相場で失敗し、完成を見ることなく自ら命を絶ったらしい。享年39。
この人物については、まったく知らなかった。相場師というと、いまや特殊な世界の怪しい人物だが、かつて株や各種の取引相場は身近な世界だったようで、「祖父さんが株で失敗して‥‥」という人は珍しくない。だからこそ「相場には手を出すな」と遠ざけられてきたのだろう。
相場で大儲けした金を公共のために投じ、財を失って追い詰められても、返してくれとは言わずに死を選んだ岩本。39年という短い人生だったが、その名は歴史に刻まれ、末代まで讃えらている。現代の資産家たちがいかに私利私欲に取り憑かれているか、落差の大きさに絶望感をおぼえた。
中央公会堂は船場の心意気を今に伝えている。この建物を大阪人はもっと誇りに思っていい。