個人的ウェイン・ショーター体験

一週間ほど前になるが、ウェイン・ショーターが逝ってしまった。高齢とはいえ、数少ない真のジャズ・ジャイアンツの一人だけに寂しさは拭えない。ジャズの歴史が終わりつつあるような気すらしてしまう。

ウェザーリポートの「A Remark You Made」やスティーリー・ダン「Aja」でのスケールの大きなプレイが印象的だった一方で、ブルーノートをはじめとするリーダー作は正直どこが良いのか、さっぱりわからなかった。予測できないアドリブの創造性に徐々に惹かれるようになったが、いまだに奥深さ、得体の知れなさを感じる。

wayne shorter Soothsayer

ウェイン・ショーターというと、個人的にこのアルバムのイメージが強い。吉祥寺にあったジャズ喫茶A&Fには、おしゃべり禁止のリスニングルームのほかにトーキングルームがあって、そこにこのアルバムジャケットが飾ってあった。未発表作品で、それほど有名ではないこの作品がなぜ飾られていたのかわからないが、魔法の壺のようなイラストが描かれた妖しい黒いジャケットはウェイン・ショーターのイメージにぴったりだった。

この一週間、ウェイン・ショーターを集中的に聴いているが、リーダー作ではなく、ウェザーリポートを含め他のミュージシャンの作品に客演した演奏のほうに惹かれる。他人のフレームのなかでこそ、ウェインの自由で独創的なプレイが輝き、際立った存在感を放つように思えるのだ。
歌伴も上手かった。90年代にライブ・アンダー・ザ・スカイで来日し、ミルトン・ナシメントと共演した際の演奏は感動的で記憶に残る。

JMの音楽監督を務めたことや作曲能力、ミステリアスであることを過大に評価すると虚像が生まれる。ウェイン・ショーターの本質は、異能の天才サックスプレイヤー、とシンプルに捉えたいと思う。