夜明け前のビル・エヴァンス

bill evans on green dolphin street

録音後発売されずに倉庫で眠っていた音源は何年経っても日陰の存在。どんなに内容が良くても名盤として認定されることはない。まるで非嫡出子のようだ。20年近く発表されずにいたこのアルバムもそんな一枚。
録音は1959年1月。一ヶ月前に『everybody digs〜』を、この後3月から4月にかけて『kind of blue』、12月には『portrait in jazz』を録るなど、美しさと鋭利さが拮抗する唯一無二のピアニズムが開花した時期の音源、悪いはずがない。

スコット・ラファロをトリオのメンバーに迎える以前のエヴァンスは"夜明け前"といったイメージがある。でも、バップの香り高いエヴァンスのピアノはこの時期ならではで、晩年の耽美的諦念とは対照的な魅力がある。
このときの音源があと数曲残っていて、1962年のセッション抜きで発売されたら、もう少し評価されていたのではないだろうか。
ジャケットの美しさで売れているように思われがちだが、日常的にエヴァンスを聴くにはちょうど良い、マイルスの『someday my prince will come』のような一枚。