トミー・フラナガンの知性と品格

tommy flanagan sunset and the mockingbird

このアルバムは選曲が魅力的なことに加えて、トミフラ67歳のバースデイコンサートでオーディエンスがハッピーバースデイを歌って祝福する様子が収録されており感動的だ。演奏は生命力が漲っていて、この4年後に亡くなってしまうとはとても想像できない。

選曲では、トム・マッキントッシュ作「With Malice Towards None」とエリントン作「Sunset and the Mockingbird」が収録されているのが魅力。
前者はリンカーンが2期目の大統領就任時に演説で語った言葉、"with malice toward none, and charity toward all."をタイトルにした曲。「誰に対しても悪意を抱かず、すべての人に慈愛の心を」という意味らしい。ボビー・ティモンズ『born to be blue!』のゴスペル的な味わいとは異なる仕上がり。
後者はエリザベス女王に捧げた『女王組曲』の冒頭を飾ったエリントンらしい奥行きのある曲。トミフラの良さが出ていて素晴らしい。
いずれもあまり演奏されることのない隠れ名曲。こうした曲を取り上げるところにトミフラの知性と品格を感じる。演奏自体はトミフラにしてはやや粗く、名盤とはいいがたいけれど、愛着がわく一枚。