今田勝の軽さとポップさ

今田勝 Songs On My Mind
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誰が名付けたか〝和製ジョー・サンプル”こと、今田勝の1982年作。手際良く料理したスタンダードで構成され、とても聴きやすい。この軽さとポップさが今田勝の持ち味だ。

このアルバムを聴きながら、今田勝のメロディメーカーぶりはどこからきているのか思い巡らした。
昭和7年東京生まれで、明治大学卒という経歴からは、ある程度裕福な家庭で生まれ育ったと想像できる。この世代の文化的素養が形成されるプロセスにおいては、ラジオの影響が大きいと思う。ラジオ放送が開始されたのは1925年、大正14年のこと。当初はラジオがある家庭などごく一部の富裕層だけで、本格的に普及するのは日中戦争が始まってから。
昭和7年に生まれた今田勝はラジオのある家で育ったはずで、ラジオから流れる歌謡曲を聴いて少年時代を送ったことだろう。ポップセンスの源流はそのあたりにあるのかもしれない。

ジョー・サンプルの名盤『Rainbow Seeker』が1978年、今田勝の『アンダルシアの風』が1980年の発表。このアルバムはその2年後となる。このころ、戦後アメリカの背中を追いかけてきた日本は"japan as No.1"と言われた。器用にジャズを演奏する今田勝には日本人の戦後が重なって見える。

今田勝は本田竹廣や板橋文夫のように暗い情念を抱えない。それは都会っ子ならではの特性。今のところまるでサザンオールスターズのように軽く扱われているが、都会っ子が増えるにつれ再評価されるにちがいない。