生命力と音楽とナショナリズム

ジョージ川口 プレイズ ハービー・ハンコック
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日系二世のような名前とポアロのような口ヒゲが印象的なジョージ川口。日本のジャズの草創期を担ったドラマーだ。これは1987年、35年ほど前の作品。パワフルで若々しい。いったい当時何歳だったんだろうと調べたら、60歳。意外と若かったことに驚く。

ハービー・ハンコックの曲を素材に、若きテレンス・ブランチャードとドナルド・ハリソンが暴れ回り、還暦のジョージ川口がプッシュする。市川秀男の編曲は原曲に忠実。ドラマーのリーダー作とはいえ、つまらないドラムソロはない。難解さなど微塵もないファンキージャズを素直に愉しみたい。

ジョージ川口昭和2年生まれの、いわゆる「昭和ひとケタ世代」。2歳下が秋吉敏子ということになる。この世代にとってジャズは、自由で豊かな国のかっこいい音楽と映ったことだろう。
戦時中は"敵性音楽"として、演奏することはもとより、聴くことすら禁じられていたジャズが、敗戦後、輝いて見える。そこには偏狭なナショナリズムなど微塵もない。あるのは健全でたくましい生命力だ。