登米を訪ねる

緊急事態宣言下の五輪連休は、都内でダラダラしても仕方ない。老母の様子を見に帰郷することにした。
渋滞を避けて早朝に出発し、途中、宮城県登米に立ち寄った。北上川の舟運で石巻に農産物を運んだ小さな昔町だ。

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明治21年完成の高等尋常小学校校舎は重要文化財に指定され、教育資料館として公開されている。コの字型の木造建築は簡素で開放的。張り出した廊下を教師や生徒たちが行き交う様子が目に浮かんだ。

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武家屋敷通りには「登米懐古館」という、この町の宝物を収める施設がある。隈研吾の設計による建築が周辺の環境に溶け込んで美しい。

かつての中心地には旧警察署庁舎が建ち「警察資料館」として公開されている。通りはすっかり寂れてしまい、かろうじて商店街だったことがうかがえる程度だ。
この建物の見どころは、お白洲のような調べ所と留置所が建物内にあるところ。明治村でも見ることができないもので、こぢんまりした警察署だからこその面白さがあった。

小さな昔町を訪れると、豊かではないものの秩序ある暮らしの痕跡を見ることができる。それが安定なのか閉塞なのかはわからない。ただ、急進的な変化は多くのものを失わせ、決して人々を幸福にはしないように思う。
長期的視野で漸進的な道を進むこと。それがもっとも幸福をもたらすのではないだろうか。今のところそんな考えに至っている。