無言館を訪ねて

長野・上田市郊外の「無言館」を訪ねた。戦没画学生の作品を展示する、この小さな美術館は、塩田平を見下ろす小高い丘の上にある。

コンクリート打ちっぱなしの建築は、館長である窪島誠一郎のアイデアに基づいて地元の建設会社が施工したという。慰霊の施設ということからか、まるで安藤忠雄設計の教会のようだ。

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入館料は出口で支払うかたちになっており、小さな入り口からそのまま扉を押して入った。

中に入ると空気がヒンヤリしている。コンクリートの壁には目線の高さに絵画が展示され、絵の解説の代わりに画家の短い経歴とその最期を伝える逸話が添えられている。
作品と画家の生涯を一つひとつなぞりながら見ていくと、言葉は沈んでいき無言になっていく。

出口で入館料を支払い、軽く会話を交わした。こういうシステムのほうが、自然な流れで作品に接することができるし、気になったことも質問できてよいと思った。

この美術館は、館長自身の人生のように、人間の運命と意志を強く感じさせる空間となっている。このような施設をつくろうとした経緯や完成までの物語をもう少し詳しく知りたくなった。