ドン・チェリーの超ジャズ

コロナ後の世界はどうなるのだろう。日米ともにコロナがなければ政権は代わっていなかったはずで、歴史はどこでどう変わるかわからない。人間は常に不確実さのなかに生きている。

マンフレッド・アイヒャーがいなかったら欧州ジャズは今ほど勢いはなかっただろうし、ジャズピアニストだったプリンスの父親が離婚して家を出なければ、ジャズは全く違うものになっていた可能性だってあるだろう。

ジャズの歴史がどこかで屈曲して、現代ジャズとはまったく異なるジャズが有り得たとすれば、ワールドミュージック的な方向だったような気がする。たとえばドン・チェリーのジャズのような。

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この軽やかさ、自由で開放的な音楽はいったいなんなんだろう。録音は1985年。ポストモダンの時代だ。ポストモダンワールドミュージックと親和性が高く、1980年代に日本でもブームとなった。そんな時代の空気を含んだ作品といえるだろう。

このあと冷戦が終結、日本ではバブルが弾けてポストモダンの潮流は霧散、ワールドミュージックブームも終わって、ワールドミュージック的ジャズも見られなくなってしまった。
あり得たかもしれない未来を聴くように、ドン・チェリーの音楽に耳を傾けよう。レスター・ボウイの大衆芸能的ブラックミュージックとしての超ジャズと通じる自由さがたまらなく素敵だ。