食わず嫌いの男性ボーカルのなかで

ジャズボーカルはめったに聴かない。たまに聴いても女性ボーカリストで、男のジャズボーカルはまず聴くことはない。何をすき好んで野太い男の声に耳を傾けねばならないのかと思う。
だから手元には男性ジャズボーカルのアルバムはない、若干の例外を除いて。
例外とは、ナットキングコール、ルイアームストロング、チェットベイカー、そしてジミー・スコットだ。純粋な、というとおかしいけれど、ボーカリスト専業ではジミー・スコットだけということになる。

jimmy scott all the way
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このアルバムは衝撃的だった。
中性的といえば中性的だが、チェットとはまったく違う。声変わりしないまま大人になった、いわば畸型。それが彼の個性であり魅力だ。この作品が発売されたころ、畸型好きのデビッド・リンチ監督の『ツインピークス』がブームで、ジミー・スコットも劇中で歌っていた記憶がある。

ゆっくり丁寧に歌うバラードに耳を傾けていると、一瞬一瞬を大切にしていかなければならない気持ちになる。ケニー・バロンをはじめバックも素晴らしい。数年に一度取り出してはそのたびに心が揺さぶられる永遠の名盤。