アル・コーンの渋味

西海岸で活動する白人テナーというのはどうにも食指が動かない。アル・コーンも聴く気がしないミュージシャンだった。古臭そうだし風貌がオッサンくさい。アル&ズートでは、音が硬くてズートの引き立て役といったところだ。

ところが、ある時期から、あまり個性が強くないけれども、上手い奏者というのに惹かれるようになって、ビリー・ミッチェルやチャーリー・ラウズ、テディ・エドワーズなどに手を伸ばした。その先にいたのがアル・コーンだった。

al cohn standards of excellence
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これを聴いてアル・コーンに対する認識が変わった。アル&ズートとはテナーの音がまったく違って聴こえる。硬めの音には変わりないが、芯のある良い音だ。なめらかにスイングする王道を行くスタイル。「O Grande Amor」などはスタン・ゲッツとはまた違う渋味がある。
ズートがいないことで、アル・コーンの魅力に気づくことになった。いたずらに個性的であろうとすることなく、無駄を削ぎ落とした飾らない演奏に潔さを感じるようになったということだろう。
62歳という若さで亡くなったのが惜しまれる。