菊地雅章の到達点

菊地雅章について語るのは難しい。
簡単に好きとは言えないし、さまざまな面があって得体のしれないところがある。そもそも好きとか嫌いといった対象にはさせない気配を纏っている。それが鬱陶しいと感じたなら、嫌いということになるが、それは音楽から離れたものであって本質的ではない。
こんなどうでもいい、ややこしいことを考えさせるのが菊地雅章なのだ。

菊地の最高傑作は『SUSUTO』と相場が決まっている。たしかに傾聴に値する作品ではあるけれど、エレクトリック・マイルスの強い磁場にある時代の産物で、菊地の代表作とするには抵抗を感じる。

菊地雅章を聴くならピアノソロがいい。

melancholy gil 菊地雅章
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90年代なかば以降のソロ作品群は、どれも深夜一人で聴かなければならないような深刻な孤独感に満ちている。なかでもこの作品は名曲揃いで菊地の最高傑作にあげたい。ここでの菊地は、晩年のビル・エヴァンスの諦念に通じる境地にいる。