ソウルフードとしての富山ブラック

富山市の繁華街、西町にその店はある。西町大喜本店。勝手口のような入口を恐るおそる開けると、窓のない穴倉のような店内に背中合わせにカウンターが並んでいる。

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ここは富山市民なら知らない人はいない(と思われる)元祖富山ブラックの店だ。メニューはいたってシンプル。中華そば並、大、特大、餃子はおろか味玉やキクラゲなどもない。あるのはなぜか生玉子とチャーシュー、そして白いご飯。初心者はまずこのメニュー構成に殺気を感じなければならない。

中華そば(並)の食券を買い、店員さんに渡す。まわりの様子をうかがうと、白いご飯とラーメン、いや中華そばを食べている人が目につく。丼は意外に小さめだ。
待つこと6〜7分で到着。

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一口食べると、話には聞いていたが、いやー、しょっぱい。美味いとか不味いとか以前の問題だ。
後から来た客が玉子を注文。店員さんが玉子を使った食べ方を指南している。耳をそば立てて聞くと、生卵を器に溶いて、すき焼きのようにして中華そばを食べるようにという。なるほど、この中華そばは白いご飯と一緒に食べたり、すき焼きのようにして食べるのが正しいようだ。
店内に貼ってある店の歴史を解説したチラシによれば、戦後に労働者向けに味の濃い中華そばをつくり、人気を博したとのこと。それが富山のソウルフードになり、ラーメンブームとともに「富山ブラック」というジャンルができたのだろう。

濃い味を求める労働者が減った現代では、すっかり時代遅れの味になっているはずだが、なかなかの人気ぶり。市内にはいくつか支店もある。富山のソウルフードを体験して、いざ山へ。