しぶそば

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yahooニュースで渋谷駅の立食い蕎麦店「本家しぶそば」が閉店したことを知った。再開発で来年3月に東急東横店が解体されることが決まっていたが、1か月前に閉店が決まったというから、コロナの影響が大きかったことは明らかだ。
この店は井の頭線からJRに乗り換える途中にあって、時々昼に寄らせていただいた。てっきり昭和の時代からあの場所にあったものと思っていたが、現在の場所で営業するようになったのは2005年からという。この経路で通勤していたのは2005年から2015年の間なので、10年間お世話になったことになる。

初めて入ったときの衝撃は忘れられない。
入口にレジ担当が座っていて口頭で注文。支払いを済ませても食券を渡されるわけでもなく、配膳に並ぶわけでもない。店はやや薄暗く、狭い店内には立ち席コーナーとテーブル席があり、客で溢れている。

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注文したものがちゃんと届くのだろうか──不安を抱きながらとりあえず席を探す。すると、席を定めると同時に店員さんが蕎麦をもってきてくれたのだ。

流れるような連携プレーは見事というほかない。肝心の蕎麦も美味しく、これぞ立食い蕎麦屋の見本という店だった。
ニュースによると、同じような思いをもつファンが多かったようで、閉店した9月13日には「平日より来店者が少ない日曜日ながら、通常の約1.5倍となる1271人が来店」したという。

味はもとより人気の理由は、配膳まですべてアナログで行われることが大きいと思う。自販機で食券を買い、配膳に並ぶという一般的な立食い蕎麦屋に慣れてしまうと、ちょっとした感動を覚える。
高度消費社会においては「差別化」(あるいは差異化)が必要といわれ、みな血眼になって答えを求め、骨身を削って努力している。答えはこんなところにあるのかもしれない。
再開発が完了したときには、同じかたちで営業を再開してくれることを期待したい。