ハンク・ジョーンズの品格を味わう

ハンク・ジョーンズのピアノは「上品」「洗練」というのが衆目の一致したところとなっている。饒舌多弁ではないけれど華麗に演奏全体にムードを加えていく。それがまるでモノクローム写真のような美しさなのだ。マイルスの「枯葉」でのプレイがその代表ではあるけれど、あのアルバムはキャノンボールがうるさい。アルバム単位ではズート・シムズの『Zoot at Ease』がハンクの最高の演奏ではないかと思っている。

ただ、ハンク・ジョーンズという人は、やや神格化されてしまったところがあるように思う。実のところ7〜8割は平凡で退屈な演奏をしているし、際立った個性を持つわけではないのでアルバムを買っても満足度は低い。そんなハンクのトリオ作のなかで名品といえるのがこの作品ではないだろうか。

Hank Jones For My Father

収録曲が多いので、どうしても後半だれてしまう。これで8曲くらいに絞っていれば文句なしだった。
素晴らしいポートレートも作品の価値を高めている。