『東京漂流』から37年


久しぶりに藤原新也の本を買った。
1983年に『東京漂流』で衝撃を与えた後、藤原新也はコンスタントに写真集、小説、エッセイなどを出したが、いずれも期待を超えることはなかったように思う。作家にただ依存して、編集力、企画力のない書籍が多かったといえば手厳しすぎるだろうか。
『東京漂流』から40年近く経つ。先ごろ出版されたこの本は、造本からレイアウトまでよく出来ていて、編集者の力量が感じられる。ブックデザインは鈴木成一。テキストと写真を組み合わせた表現こそが、藤原新也の力を最も発揮できることをあらためて認識した。
版元は小さな出版社。こういう丁寧な本づくりをする人は、もはや大手出版社にはいられない時代になったのだろう。コロナウイルスのずっと前から、文化は危機に瀕している。