マッコイ・タイナーの記憶

マッコイ・タイナーが亡くなった。日本のジャズシーンにも大きな影響を与えた偉大なミュージシャンの死は、一つの時代が終わった気分にさせる。
マッコイ・タイナーといえば、個人的には下北沢のジャズ喫茶「マサコ」を思い出す。

2009年に閉店したとのことだが、他のジャズ喫茶に比べると、ずいぶん最近まで営業していたほうだろう。北口商店街に中古レコード店レコファン」があり、漁盤の帰りに時々寄っていた。
少なくとも、5〜6回は訪れたはずだが、個人的には居心地が良くなく、長居しなかったせいか、店内の構造はまったく覚えていない。印象深いのは、縁日のような赤い色と、マッコイ・タイナートリオの映像を見たことだ。
初めて目にしたマッコイの曲芸のような打鍵は衝撃的だった。コルトレーン・カルテットでの抑えめのプレイとは違って、もの凄いドライブ感でぶっ飛ばす。そもそも、映画やテレビ以外の映像を見ることなどなかった時代で、ジャズミュージシャンのライブ映像を見たのも初めてだったが、なにしろ驚いた。
1960年代末から1970年代、日本も世界もエネルギーに満ちていた。そんな時代とシンクロするように、マッコイのピアノは輝いていたように思える。遅れてきた私は、モニターの中にいるマッコイに、ただただ圧倒されるだけの田舎者だった。
享年81。合掌。