Abbey Lincoln Turtle's Dream
ジャズボーカルというと大人のムード歌謡のようなイメージがこびりついていて、モダンジャズファンとの相性は決してよろしくないと思われる。自分もショップでボーカルコーナーを覗くことはない。サイドにいいメンバーが入っていると、聴いてみようと思う程度だから、コレクションにボーカルものは極端に少ない。
そのなかで、数年に一度取り出しては感涙してしまうのが、このアルバム。前作のスタン・ゲッツを迎えての作品に続いて、こちらはパットメセニーがゲスト。ZITANESレーベルの素晴らしいプロデュースだと思う。
なんといっても1曲めにやられてしまう。
Throw It Away
Throw It Away
諦念感を漂わせてアビー・リンカーンが歌う。無駄なものを纏って身動きが出来なくなっているのではないか、大切なものだけを抱えて生きていけばいいのだと語りかけてくる。まるで説法を受けているかのようだ。
変革への衝動、過剰な自信、ちっぽけな誇り‥‥歳をとるにつれて捨てるべきものがはっきり見えてくる。
そうだ、どんどん打ち捨てればいい。墓場まで持っていけるものは何もない。