友&愛とその時代

佐藤允彦 As If...

新宿のdisk union セカンドハンズで懐かしいアルバムを見つけた。佐藤允彦がエディ・ゴメス、スティーブ・ガッドというトリオで録音したこのアルバム、当時「友&愛」というレンタルレコード店で借りてダビングして聴いていた。
「友&愛」という店名は、今からみればこっぱずかしいが、時代の空気を映し出している。1980年代前半の日本では、アメリカンカルチャーが全盛だった。鈴木英人のイラスト、東京ディズニーランド開園、コカ・コーラ、ファミレス。東名東京インター出口の環八沿いには若者向けのカフェレストランが並ぶアメリカ村と呼ばれるエリアが現出していた。サザンオールスターズはそんな時代の象徴だ。誰もが空疎さに気づくことなく、豊かさに浸っていた時代。やがてバブルに進むのは必然だったように思える。
友&愛もレンタルレコード屋もバブル以前に消えてしまった。ファミレスとサザンオールスターズが生き残っているのは、空疎なくらいが息抜きにはちょうど良いという人が多いからだと踏んでいる。


佐藤允彦のこのアルバム、久しぶりに聴いたが、今聴いても新鮮だ。佐藤允彦の硬質でちょっとアブストラクトなピアノはあの時代とは間逆の方向で清々しいし、スティーブ・ガッドのタイトなドラムとの相性は悪くない。

エバンス愛奏曲集のような選曲は、この数年前にリッチー・バイラークがトリオに吹き込んだ『エレジー・フォー・ビル・エバンス』を意識したものに思える。あちらはジョージ・ムラーツ、アル・フォスターという保守的な布陣での録音。サラリーマンっぽい外見に騙されるが、佐藤允彦のほうがラジカルで現代的だ。